家の中で音がすることが、一番怖かった。
車が止まる音。
玄関が開く音。
階段を上ってくる足音。
その音を聞くと、もうわかっていました。
今日も始まるんだ、と。
今でも、音に反応することがあります。
でも最近、少しずつわかってきました。
反応する音のすべてが、怖いわけではないということを。
家の中の音
私の部屋は2階にありました。
階段からも比較的近く、家の中の音がよく聞こえる部屋だったと思います。
家の前に車が止まる。
それは、父が帰ってきたとわかる音でした。
玄関が開いて、ものすごい足音がする。
「あ、酔ってるな」
普段の父と、酔っているときの父。
足音だけでも、明らかに違いました。
しばらくすると、階段を上ってくる音が聞こえてきます。
また、始まるんだ。
逃げることもできない。
隠れる場所もない。
部屋の外から鍵がかかっている。
窓から降りようとしても、無事ではいられない高さでした。
心が死んでいく音まで、聞こえてきそうでした。
音に反応する
耳の悪い私でも、突然鳴る音は苦手です。
大きな音にも反応します。
今でも、ビクッとすることがあります。
一瞬、実家にいるような感覚になる。
でも少し経つと、
「ここは、あの家じゃない」
そうわかって、ホッとします。
酔っぱらった大人が大声を出していると、ふと父のことが浮かぶこともあります。
でも、大丈夫。
もう、あの人たちはいない。
すぐに反応しなくなるわけではありません。
それでも少しずつ、音への反応は減ってきました。
反応しても、以前より早く戻れるようになっています。
今、聞こえる音
今は、一人で暮らしています。
ここにも、いろいろな音があります。
洗濯機の音。
掃除機の音。
外から聞こえる生活音。
雨の音。
以前なら反応していた音にも、少しずつ反応しなくなってきました。
反応したとしても、
「あ、大丈夫だった」
そう思って戻れることが増えています。
それだけでも、かなり精神的に楽になりました。
怖かったものが、突然すべて平気になるわけではない。
反応することだって、まだあります。
でも、
反応することと、怖いことは、同じではない。
それが少しずつわかるようになってきました。
きっとこれからも、こんなふうに少しずつ、怖いものが減っていけばいい。
そう、自分に期待しています。
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